巨大なかぐや姫がお出迎え

奈良県の北部にある広陵町は「竹取物語」の舞台らしい。
作者も作られた時代も数多くの説はあるがよく分かっていない「竹取物語」だが、「源氏物語」を書いた紫式部から「物語のいでき始めの祖」(始まりの物語・小説)と言わせている。
世界最古のSF小説ともいわれる物語が生まれたかもしれない町を訪ねてみた。
写真の巨大かぐや姫は、はしお元気村というマルシェと町の文化センターが一緒になった建物の屋根にいる。

かぐや姫と翁・媼が暮らした場所

はしお元気村から車を少し走らせると「讃岐神社」がある。ここが竹取物語の舞台と伝わっている。
絵本などでは翁は名前のないおじいさんと書かれていることが多いが、原作には翁の名は「讃岐の造(みやつこ)」とある。
これは広陵町に四国の讃岐から広陵町に竹細工を得意とする人たちを連れてきて住まわせたことが由来らしい。
絵本なんかでは竹に囲まれている翁の家だが、讃岐神社には鳥居の近くにしか竹はなく、その竹も決して風情のあるものではないが物語が作られたという奈良時代の終わりごろから平安時代の初めには竹が生い茂っていたのだろうか。

竹取物語に秘めれれたもの

「竹取物語」は単純に優れた物語というだけで1000年以上のときを越えて伝わったわけではないだろう。
支配者や都、町の風景、話す言葉すら変わっても残る物語には人を惹きつける多くの謎が隠されている。
作者が誰かというだけでも多くの説がある。真言密教を作った空海や、土佐日記を書いた紀貫之、などなど。
物語のラストでかぐや姫が帝に渡す不死の薬から、秦の始皇帝から不死の薬を探し出すように命じられた徐福との関連を見つけることもできるらしい。
●不可能と思われる難題を受け取った五人の男は当時の貴族にモデルがいる。
●月からかぐや姫を迎えに来る天人は宇宙人のアブダクション。
●不死の薬を燃やした富士山から、幻の富士王朝。
どの説も面白く、魅力的だ。「竹取物語」の謎に迫った本は数多く出版されているので、ぜひ皆さんもそれらの本を読んで自分なりの説を考えて、名探偵気分でかぐや姫伝承の地を歩いてほしい。

関連本

竹取物語 現代語訳対照・索引付 大井田晴彦
ページの上下で古語と現代語を分けているので読みやすい。物語だけでなく当時の文化などの解説もあり、なんとなく知っているぐらいだった竹取物語がこんなにも深い物語だったのかと驚かされる。

竹取物語と紀貫之 西山寛賛
竹取物語の作者を紀貫之としている。物語を政治の腐敗や不正を糾弾する紀貫之の怒りの叫びがこもった物としている。古代の王朝や仏教にまつわる話が多くのってあり、竹取物語はいくつの面を持っているのだろうかと思い知らされる。

自説

讃岐の造は忌部氏の出身とある。祭祀を担当していた忌部氏の出なら翁が作る竹細工はただの日用品ではないだろう。帝に献上するために呼び寄せたともあることから特別な呪術に使う物だったはずだ。
帝に竹細工といわれて連想する物は、山幸彦が海に潜るために使った無目籠だ(古事記・日本書紀にある海幸山幸の段)。目が堅く詰まった竹かごに入って山幸彦は人が立ち入ることのできない海の底という異界へと旅立った。
民俗学者の吉野裕子は古代祭祀で大事なものの一つに「こもり」があるという。これは文字通り洞窟や部屋など誰の目にも触れないところに引きこもるということである。これは、光も届かない場所にこもることで子宮にいる胎児となり、その場所を出ることで新たに生まれ変わることを再現しているという。天岩戸からでてきたアマテラスも新たな神として生まれ変わったという。魂の再生・生まれ変わり・蘇りの儀式だ。
この「こもり」の儀式をするために竹細工の上手なものが竹取りの翁・讃岐の造だったのではないか。帝を生まれ変わらせる竹かごを作ることができる翁は命を生むことができるとも言えないだろうか。
かぐや姫が宿る竹を翁が見つけたのではなく、翁が竹の中にかぐや姫を生んだ。
誰が「竹取物語」を書いたのかは分からないが、竹の中に命を生むことができる翁から物語の着想を得たのかもしれない。